「社内調査委員会」二つの意義
同委員会は、翌98年4月に「社内調査報告書―いわゆる簿外債務を中心として―」を公表するのだが、実は社外弁護士の一人として調査に携わったのが、現在、われらが第三者委員会報告書格付け委員会の副委員長を務める國廣正氏である。
同氏は、著書『修羅場の経営責任』(文春新書)で、同委員会には二つの意義があった、と述べている(198~199ページ)。
「一つは、山一の破綻に至る事実関係を、第三者的観点から、詳細かつ徹底的に調査、検証し、これを『社内調査報告書』という形で対外的に公表したということである。これは当時としては前例のない試みだった。
社内調査報告書の公表は、リスク管理不在、先送り、隠蔽、責任回避、官との癒着という巨大証券会社の経営実態を白日の下に明らかにした。加えて、本業そっちのけで財テクに走り、損失が発生すれば自分が『被害者』だとして損失補填を求める自己責任意識の欠如した顧客企業、『見て見ぬふり』をしながら最後には梯子をはずして引導を渡す『官』の実態も明らかにした。社内調査報告書は、うわさや評論としてではなく『事実』として、これらのことを明らかにした点に意味がある」