昭和から令和を生き続けて

今までは、自分の過去や胸中の思いなどを世間様にあえて明かすことが好きではなかった。過去を振り返るなんて、ちっとも刺激的なことじゃない。それに、そのときどきの心の内を赤裸々に明かすことにも意義を感じなかった。他人の大変な思いや経験、悩みなんか、誰も聞きたくないだろうと思っていた。

ところが、その後、コロナ禍を経て考える時間もできた中、時代が、そして人の意識や常識が大きく変わっていくさまを目の当たりにしながら、考えが変わっていった。昭和から令和にかけて芸能界で生き続けた僕が、見聞きし、体験したこと、感じたことを、あえて書き残すことは、今だからこそ、もしかしたら意味があるかもしれない。

先が読めない時代に、僕の経験がなにかの、あるいは誰かのヒントになるなら、喜ばしいことなのではないか。それに、僕自身がこれからの日々をいかに生きていくべきかを考えるにあたっても、忘れていた過去を少し紐解(ひもと)き、整理したいと考えたのだった。

変わりゆく世の中、そして芸能界でも、個としての自分自身がどういうマインドを持って生きていくかが問われている。どんな未来が待っていようとも、今こそ思い返し、吟味すべき大切なことがあるのではないか。

人生長寿時代。「楽しく生きること」のもうひとつ先を考えたい。

風のように軽やかに。そんな思いを込めて。

※本稿は、『最高の二番手』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。


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