前代未聞の2日連続公演

そして今や世界的水準に達した〈フエダ〉は、23年6月、イタリア、パレルモ・マッシモ劇場の引っ越し公演『ラ・ボエーム』のロドルフォ、突然の代役をみごとに務めて、日本人テノールの実力を輝かしく印象づけた。

――あの時、僕はサントリーホールでの本番を終えて、夜の10時半くらいに車を運転してたら、「明日空いてますか?」って電話が。

ロドルフォ役が、突然声が出なくなったので、明日は静岡、その翌日はびわ湖ホールで歌ってくれますか? って。ロドルフォはもう何度もやってる役なんで、全部入ってますから、いいですよ、って言って。

で、翌日静岡に行ったらマエストロ(指揮者)が、「お前、ちゃんと歌えるか? 半音下げないでいいか?」みたいな顔してたんですが、原調で大丈夫ですと言って、最後まで歌い切ったらもうすごい拍手をいただいて、本当によかったです。

2日続けてオペラというのは前代未聞のことで、すごく過酷でしたけど、僕は2日目のほうがかえって調子がよかったですね。(笑)