見返り柳

衣紋坂を過ぎ、吉原を背にして少し右のほうに行くと、柳の木が見えてきます。この柳は、見返り柳です。

客は、今度はここで、名残惜しさの余り振り返って、吉原を見つめたといわれています。そのため、見返り柳と呼ばれるようになったのです。

吉原とは、訪れる客にとってはそれほど素晴らしい場所だったのでしょう。見返り柳は、現在の東京都台東区千束四丁目交差点に、石碑として遺されています。

楽しいも辛いも全部見てきた見返り柳。そこに立てば、時空を超えてしまいそうです。行ってみたいような行ってみたくないような史跡です。

※本稿は、『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(興陽館)の一部を再編集したものです。


べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(著:ツタヤピロコ/興陽館)

辣腕編集者であり天才出版人、蔦屋重三郎。

江戸・吉原に生まれた一人の男はいかに生きて、出版業界の礎を築きあげていったのか。

生きざま、ビジネス、才覚、そのすべてがわかる本。