特に高齢者は「圧迫骨折」に注意

転倒や咳やくしゃみなどの軽いケガで脊椎の圧迫骨折がよく起こります。また、骨粗しょう症が原因で知らない間に圧迫骨折が起こることがあり「いつの間にか骨折」とか「隠れ骨折」などといいます。

高齢の方の背部痛や腰痛では必ずX線で検査を行いますが、X線検査をしても徐々に骨折が進むために、すぐには分からない場合があります。背中や腰の痛みが続く場合は、1~2週間後に再度X線検査を受けてください。痛い部位より数センチ上に骨折があることも多く、高齢者では胸椎と腰椎の両方のX線検査を受けるほうが無難です。

圧迫骨折の痛みは、強いこともあれば、ほとんど感じないこともあります。痛みが強い場合は、コルセットやギプスで固定します。また、骨粗しょう症があれば、その治療も同時に行います。

脊椎の圧迫骨折を一度起こすと再び骨折を生じやすくなり、2回骨折を起こすと3回目の骨折がもっと起こりやすくなります。骨折の連鎖を止めることが大切で、最近では骨折の連鎖を止める強力な注射薬が3種類ほど保険適用になっています。

高齢の場合は、長く寝込むと筋力が急速に衰えて寝たきりになる危険があり、よほどの痛みでない限り痛くてもコルセットを着けたりして、できるだけ少しでも起きてゆっくりと普段通りの生活を送ることが大切です。寝込みすぎに注意してください。

 

※本稿は、『健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』(創元社)の一部を再編集したものです。


健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』(著:井尻慎一郎/創元社)

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