世界保健統計2023年度版によると、日本人の健康寿命(健康上の問題で日常生活に制限のない期間)は、男性が72.6歳、女性が75.5歳でした。しかし平均寿命のほうがはるかに長く、その差は男女でそれぞれ約9年、約12年あります。要介護や寝たきりの期間が長い傾向にある中、これらを予防し「寿命の質」を高めるためには、どうすれば良いのでしょうか?そこで今回は、これまで5万3000人以上の患者に寄り添ってきた整形外科医・井尻慎一郎先生の著書『健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』より、今日からできる健康のヒントを一部ご紹介します。
「四十肩・五十肩」になるのはなぜ?
一般的に「四十肩」や「五十肩」というのは、肩関節の骨や軟骨には異常がないのに、周囲の筋肉や骨と骨をつなぐ靭帯、筋肉と骨をつなぐ腱、関節を包む関節包などに炎症や老化による変性、損傷、断裂などが単独か複合して起きる病気です。
正式な病名は「肩関節周囲炎」で、中年での発症が多いことから「四十肩」「五十肩」とも呼ばれます。肩を上げる、後ろにまわす、服の脱ぎ着などで痛みが強くなり、肩の動きが制限されます。肘のあたりまで痛みが放散することもあります。
痛みの程度により適宜鎮痛薬や湿布などを使いつつ、肩を痛い方向に少しずつ動かしていくことが大切です。痛いからと安静にしていると関節が固まってしまうので、少し痛みを感じる程度に1日数回少しずつゆっくり動かすことが大事です。
両手の指を体の前で組んで手のひらを前方に返し、両手を組んだまま頭の上まで動かし天井に向かって背伸びしてください。ついでに体を左右に動かしたりひねったりすると、背伸び体操にもなります。これができなかったり、髪の毛を結う動作、帯を後ろで結ぶ動作ができなかったりすると、五十肩になっている可能性があります。
たまに、関節の奥にある腱板が断裂していて手術をしたほうがよいこともあるので、長引く場合は整形外科を受診してください。