肩が上がらない原因は?

肩が上がらなくなる原因の1つは肩関節自体の問題で、肩関節のカプセルや靱帯、筋肉が炎症などで拘縮する五十肩や、老化やケガで肩を挙上する腱板が断裂する場合です。消炎鎮痛薬の湿布や経口薬、注射を使いながらリハビリで治していきます。

痛くても痛い方向に少しずつ頑張って動かすのが大切です。拘縮が強い場合や腱板が完全に切れている場合は手術が必要なこともあります。

2つ目の原因は、麻痺によるものです。脳梗塞や脳内出血など脳が原因で肩が上がらない麻痺は、多くの場合肩以外の肘や手などにも麻痺があります。

コロナウイルスワクチンの肩の筋肉注射では、肩だけ麻痺が生じる腋窩(えきか)神経麻痺が起こることもあります。肩を挙上する三角筋を動かす腋窩神経が注射針で傷つくと肩の外側部にしびれが生じ、肩を上げるのが困難になるのです。神経を元気にするビタミンB12を服用し、リハビリで肩の挙上を回復します。

頚椎椎間板ヘルニアで、稀にしびれがないのに肩だけ上がらなくなるキーガンタイプの麻痺があります。ヘルニアが頚椎から腕に出る第5番目の神経の前方だけを圧迫し生じますが、非常に稀で、滅多にないために整形外科医でも診断がつかないことがよくあります。麻痺が治らなければ、頚椎の手術が必要なこともあります。

 

※本稿は、『健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』(創元社)の一部を再編集したものです。

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健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』(著:井尻慎一郎/創元社)

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