(写真提供:Photo AC)
1997年『海峡の光』で芥川賞を受賞した作家・辻仁成さん。現在はパリとノルマンディを行き来しながら、ミニチュアダックスフンドの愛犬・三四郎と一緒に暮らしています。辻さんは、三四郎と過ごす日々を通して「息子が巣立ち一人になった人間に、子犬が生きる素晴らしさ、笑うこと、幸せを教えてくれた」と考えたそう。今回は、そんな辻さんの著書『犬と生きる』から、一部を抜粋してお届けします。

それでも世界は動き、胸を痛めつつも、ぼくはお弁当やごはんを作る毎日にいる

2月某日、ウクライナ人の多いパリ、市民はみんなロシア軍の進軍に怒りを覚えながら、テレビにかじりついている。うちも息子が心配そうな顔をしているので、今は、勉強に精を出し、いずれ、こういう問題をちゃんと世界に伝えられるジャーナリストになりなさい、と伝えた。

彼は結局、広い意味でのIT広告やジャーナリズムの専門分野を目指している。コロナ禍でも戦争でも、学生は勉強をするしかない。しかし、そこに「するしかない」目標があることは大事である。生活のリズムが破壊されることが戦争だからだ。

ということで世界がこんなに激動していても、息子にお弁当を作った父ちゃん。

今日は、マグロ・マヨ入りのおにぎり、とんかつ&野菜弁当にした。ぎゅっと米を詰めて握ったし、海苔には薄く醤油をつけているので、食べる頃には染みて、美味いはずだ。ただ、歯に海苔がつくとまぬけな顔になるのでかっこわるいぞ、と忠告。