読者の不満の声を聞く
蔦重が『吉原細見』のリニューアルを引き受けた際、このガイドブックは売れている商品ではありながら、すこぶる評判が悪かった。
それは目まぐるしく店や遊女が移り変わる吉原なのに、情報の更新がまったく間に合っていなかったから。
「この店に行こう」と楽しみにして現地に行けば、「すでにその店はなくなっていた」「目当ての遊女がいなかった」ということが平気で起こっていたのだ。
読者はガッカリするし、ガイドブックとしては致命的である。
他にも「現場で使いにくい」「値段が高い」などの悪評があった。
結局、蔦重が成功したのは「読者の不満を解決したから」に他ならない。
ものが売れないと嘆く人々は、本当にお客の声を聞いているのか。自身に問いかける必要があるだろう。