インフルエンサーに発信してもらう

ページを薄くし、値段を安くしたガイドブック『吉原細見』だが、蔦重はわざわざ豪華版もつくっている。いまでいう雑誌の付録のような形で、多色刷りの美しい外袋をつけたバージョンも売り出したのである。その意図はどこにあったのか?

蔦重はこれを、吉原に頻繁に通う“通(つう)”と呼ばれた常連に配ったのではないか。

美しい外袋は、目立つ。それを“通”の格好いい男が持っていれば、当然、自分も欲しいと思う人は多いはずだ。

これはブランドの商品を芸能人に配ったり、インフルエンサーに発信してもらういまのマーケティングと同じだ。

江戸時代、すでに蔦重は、現代に先駆けたプロモーションをやっていたのである。

 

※本稿は、『蔦屋重三郎の慧眼』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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蔦屋重三郎の慧眼』(著:車浮代/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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