(写真提供:Photo AC)
現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。横浜流星さんが演じる主人公は、編集者や出版人として江戸の出版業界を支えた“蔦重”こと蔦屋重三郎です。江戸のメディア王と呼ばれた重三郎は、どのようなセンスを持ち合わせていたのでしょうか?今回は、書籍『蔦屋重三郎の慧眼』をもとに、総合印刷会社でアートディレクターやデザイナーの経験を持つ時代小説家・車浮代さんに、重三郎の仕事術について解説していただきました。

逆境こそチャンスだ

『吉原細見』という、吉原の公式ガイドブックをリニューアルする仕事を引き受けた蔦重。ところが不運なことに、この仕事はストップしてしまう。

なんと版元「鱗形屋」の社長が、著作権侵害で訴えられたのである。大坂(大阪)で出た出版物を、勝手にタイトルだけ変えて発売したようだが、蔦重には寝耳に水だったろう。

これではギャラすら、もらえないかもしれない。

大ピンチだが、蔦重はこれを逆利用する。蔦重版『吉原細見』を地本問屋仲間に入らず、勝手に出したのだ。やがて独占販売となり、自身の版元「耕書堂」を日本で一、二を争う版元にまで成長させた。

つまりは、ピンチのときこそ、大チャンスが訪れているのだ。

嘆く前に、自分に何ができるかを考えよう。