「いままでのやり方」に縛られない

蔦重が新しく売り出した吉原のガイドブックに、彼はこのとき大幅な改変を加えた。

紙面を少し大きくし、その代わりページ数を大幅に減らしたのである。

『蔦屋重三郎の慧眼』(著:車浮代/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

手軽になったガイドブックだが、これを開くと違いは一目瞭然である。真ん中に大通りを描き、そこを挟んで上下向き合わせで店の名前を並べたのだ。

そう、ガイドブックは現地で「地図」としても使えたのだ。おまけにページが薄くなったぶん、値段も安くすることができた。

この新ガイド『籬(まがき)の花』が好評だったのは、想像に難くない。

読者の立場に立つから、この発想ができる。「いままでのやり方」に縛られてはいけない。