どんな仕事も手を抜かない
子どものための教育書も、「確実に売れる」という堅実なジャンルだった。蔦重は初期の頃から、その企画に着手している。
確実に売れるから、正直さほど、ここに予算をかける必要はない。ところがその子どもの教育書の挿画を、蔦重は北尾重政に依頼した。美人画にも傑作を残し、北尾派という一門を率いたほどの大物の絵師である。
重政も蔦重も、子ども向けの本だろうが、手を抜かない。どんなジャンルでも、最高傑作をめざす。そんな姿勢があったからこそ、蔦重の仕事は信頼された。
※本稿は、『蔦屋重三郎の慧眼』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
『蔦屋重三郎の慧眼』(著:車浮代/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
2025年大河ドラマ「べらぼう」の主人公・蔦重が大人気エッセンシャルシリーズに登場!
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出典=『蔦屋重三郎の慧眼』(著:車浮代/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
車浮代
時代小説家、江戸料理文化研究家
1964年大阪生まれ。大阪芸術大学卒業後、東洋紙業でアートディレクター、セイコーエプソンでデザイナーを務める。その後、第18回シナリオ作家協会「大伴昌司賞」大賞受賞をきっかけに会社員から転身、映画監督・新藤兼人氏に師事し、シナリオを学ぶ。現在は作家の柘いつか氏に師事。ベストセラーとなった小説『蔦重の教え』(飛鳥新社/双葉文庫)と続編の『蔦重の矜持』(双葉社)のほか、『Art of 蔦重』(笠間書院)、『居酒屋 蔦重』(ORANGE PAGE MOOK)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人』(PHP文庫)など、著書多数。江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK「チコちゃんに叱られる!」「美の壺」「知恵泉」「歴史探偵」等のTV出演やラジオ出演多数。2024年春、江戸風レンタルスタジオ「うきよの台所 ─Ukiyo’s Kitchen─」をオープン。江戸料理の動画配信も行っている。