現代の60、70代は、まだまだ若い一方、「老い」をどう受け入れていくかについて、考え始める世代でもあります。そんな時助けになるのが「知力」です。「インプットした情報はアウトプット」、「できないことには鈍感力を発揮」など日々の習慣が、60代からの自分を作り直してくれます。「身体」と同様に「知力」にも鍛え方や保ち方のコツがあると語る、身体と言葉の専門家・齋藤孝さんの著書『60代からの知力の保ち方』より一部を抜粋して紹介します。
心の若さは、相手をリスペクトすることから
日常的に続け意外に効果があることのひとつにテレビでスポーツ観戦時、拍手することが挙げられます。
贔屓の選手だけでなくよく知らない選手、敵味方関係なく、拍手すると、自分の中で何かが目覚める感じがします。
他人を称賛する気持ちは、若々しさにつながります。他者に敬意を払うことは大事なポイントですが、何しろ忘れやすいのです。
敬意を失えば関心も失い、自分中心になっていきます。自分より優れた人に関心を向け続けることは、案外難しいものです。
中高年になるとそれなりに経験を積んで、自信もあり、目上の人もいなくなるので、何もしないでいると自己中心的になってしまいがちです。
部活を引退した、高校3年生やOBのようなイメージです。もう現役ではないのに、態度だけは大きいと嫌われます。
逆にほめてくれる先輩は好かれます。私が高校でテニス部にいた時、仕事の合間に顔を出し、邪魔にならないようコート脇のネット外から、練習を眺めるOBがいました。
昔戦績も挙げた実力ある選手だったOBですが、自慢話は一切せず、高校生に対しても否定はせず、「いいね。そのバックハンドやってみて」と現役をほめる。ポジティブな評価をくれるのです。
子どもは「すごい」とか「面白い」とすぐ口にしますが、大人になるとだんだん「すごい」と言わなくなる傾向があります。子どもと同じものを見ても、感動がないのです。
本来は大人の方が知識はあるのだから、人の能力のすごさはよりわかるはずです。ほめる気持ちを邪魔するのは、エゴやプライド、競争心です。もう、捨てませんか。