命懸けだった韓国遠征

韓国遠征は、命懸けの仕事になった。

地元の英雄、パク・ソンナンとの試合は、兄貴が勝敗に関する交渉をハネつけたことから期せずして事実上のリアルファイトになり、兄貴がソンナンに勝利した。

『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(著:猪木啓介/講談社)

試合後、興奮した観衆が私たちの乗ったバスに投石を開始。バチバチという異様な音に包まれながら、バスは猛スピードで発進、会場をなんとか脱出した。

あのときはよく窓ガラスが割れなかったものだと思うが、いまのプロレス界ではまず起こり得ない事件だった。