比嘉 始めたはいいけど、お客さんはいつも仲間が数人だけだった。で、活気づけたいみたいなのがあって、当時、すごい人気だったTBSのオーディション番組『イカ天(三宅裕司のいかすバンド天国)』に出演するってライブ中に言ったんだよね。

島袋 ほんの冗談のつもりだったのに、仲間から「いつ出るんだよ」ってガンガン連絡が入るようになって、慌てて応募したら出演が決まって。

上地 オリジナル曲ないけど、どうすんの? ってなった。

比嘉 作詞作曲なんてしたことないしって思ったんだけど、いや待てよ、「恋しくて」があるじゃないかと。優が遠距離恋愛してた彼女にフラれて生まれた歌だよね。

島袋 20歳のある日、彼女から話したいことがあるって手紙が来て、テレフォンカードが入ってたんだけど、「都会の絵の具に染まったあなたとは別れたい」って件だなと察して。

上地 「木綿のハンカチーフ」的に。(笑)

島袋 とにかく電話するのが怖くて、栄昇に電話ボックスまでついてきてもらったんだよ。寒い日で、なんなら雪がちらついてた。でも話が終わるまで、ずーっと外で待っててくれたよね。で、失恋はしたけど、自分には仲間もいるし、みたいなことを考えてたら、なんとなくメロディが浮かんできて。

比嘉 ブルースにハマってたから、ああいう曲調の歌になったんだろうね。

島袋 等の車のなかで、こんな歌ができたってギターを弾きながら2人に聞いてもらった時は、死ぬほど緊張したよ。まさか「恋しくて」でプロデビューできるとはね。

上地 そもそも5週勝ち抜けるとも思ってなかったし。

比嘉 2代目イカ天キングに選ばれてから、いつものように山手線に乗ったら、車両中の人たちから「おめでとう!」って拍手されて不安になった。何かが始まろうとしてる、ヤバいって。僕は石垣に帰りたかったし、でも音楽で認められたのは嬉しかったしで、複雑な心境だったのを覚えてる。

上地 わけもわからずプロとして走り始めたけど、3人でBEGINを再結成してからわずか2年でデビュー曲が大ヒットするっていうスピード感についていけなかったよね。

後編につづく

【関連記事】
竹内まりや「65歳を過ぎ〈残り時間〉をリアルに意識した。桑田君夫妻に誘われて始めたボウリングにハマってます」
南こうせつ「70歳で大きな家からコンパクトな平屋に建て替えて。今後は、先だった仲間の分まで頑張る。声が出なくなったら、キーを3つ下げた『神田川』も味わい深いのでは」
宮本浩次「〈宮本も56歳。立派なオヤジなんだから、休むことも覚えなくちゃ〉と言われ。今後はストイックなだけでなく、緩急をつけて生きていく」

3月22日に大阪・大阪城ホール、3月30日に東京・日本武道館で35周年記念公演「さにしゃんサンゴSHOW!!」開催