左は柴崎さんが自分で生けた菊の花の写生(クレヨン)、右上はコロナ下に鉛筆一本で描いたティラノサウルス、右下は現在運休中のいすみ鉄道「国吉駅」(水彩画)

再生回数が伸びずグチったことも

もの作りが好きなので、庭造りとか、職人さんがお煎餅を焼く動画などを日頃から楽しんでいて、ユーチューブには馴染みがありました。その時は70歳になっていましたが、通信講座でビデオ撮影をしながら絵を描いた経験がありましたし、面白そうだからやってみようかと。

そこでさっそくカメラと照明機材を買ってきて撮影を始めましたが、真っ暗で何も映っていなかったり、ナレーションが録音できていなかったりと失敗ばかり。やっと撮影に成功しても、慣れない動画編集作業がまた大変でした。

今は編集を専門のスタッフに頼んでいますが、基本的には自分のことは自分でしたい性分。大変といえば大変でしたが、少しずつ映像として見られるものができると、どんどん面白くなってきたのです。

動画では、水彩画の面白さを一人でも多くの人に伝えたいと考えました。「俺が先生だ」と大上段に構えるのではなく、簡単な言葉で、わかりやすい例を出しつつ説明する。冗談を言ったり歌ったりしながら描き、楽しく教えることを心がけました。

初めは生徒さんなどから「観ましたよ」と言われる程度だったのが、少しずつ登録者数が増えて。耳の不自由な方や僕の早口についていけない人のための日本語字幕に加え、海外の人向けに英語の字幕もつけたのがよかったのでしょうか。

アメリカでかつて人気だったテレビ番組『ボブの絵画教室』になぞらえ、「日本にもボブがいた!」と紹介されたのを機に、海外でも観てくれる人が増えたのです。

しかし、ユーチューブを始めて2年目頃に、「このまま続けていいのか」と悩んだこともありました。「再生回数が伸びないのはなぜだろう」「絵を練習する役に立っているのかな」と弱気になったのです。

よせばいいのにそれをグチる動画を出してしまいましてね。すると視聴者の皆さんから、「柴崎さんの動画を観ると幸せになるんです」「楽しいから続けてほしい」といった応援コメントがたくさん届きました。

それまで僕は、「自分の知っていることを教えてあげれば、皆が喜んでくれる」と思っていた。でもそれは一種の傲慢で、「絵を描くのってこんなに楽しいぜ。ものを作るって素敵だよ」と素直に伝えることのほうが大切なんだと気づけました。