「物価高や不景気の影響で娯楽を控えてる」「趣味がなく日常がマンネリ化」そんな日々を退屈に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのようななか、「なんてことのない日々こそありがたく、そこに誰でもさまざまな思いがあり、そのどれもがそのままで正解なんじゃないか」と語るのは、夫や息子、愛犬との生活をつづるインスタグラムが話題のモデル・浜島直子さん。そこで今回は、浜島さんの喜怒哀楽が詰まったエッセイ集『キドアイラク譚』から一部引用、再編集してお届けします。
「小さなひと」
こんなに小さかったのか、と思います。息子の赤ちゃんの頃の服を手に取るたびに。頼りなさげな肩、手のひらほどの背中、心もとない細い二の腕。小さな布をそっと抱き上げてみると、あの頃の息子が私に微笑みかけてきます。
あぁ、そうだった。全てを許してしまう柔らかなほっぺに、台風の日に生まれた証しの、おでこのつむじ。
夏のトマトのような喜びが詰まっている、瑞々しいお尻。そうだった、こんなにも儚かったのだと絶望にも似た愛おしさが込み上げてきて、胸がぎゅっと締めつけられます。
なんて小さなひとだったのか、と。