晩年の宍戸錠さん(写真提供:朝日新聞社)


本インタビューは、以下で、全文公開しています。
宍戸錠の娘・紫しえが語る「ハードボイルドな父の最期、弟たちを葬儀に呼ばなかった理由」

2020年1月18日、俳優の宍戸錠さんが86歳で亡くなりました。本日発売の『婦人公論』2月25日号では、数日前まで元気だったという宍戸さんの急逝について、宍戸さんの長女・紫しえさんが初めて明かしています(構成=篠藤ゆり)

もう終わっているんだな、と…

2010年に母(エッセイストの宍戸游子さん)が亡くなった後、父はずっと一人暮らしでした。13年に実家が火事で焼けてからはマンション住まいに。この数年は近所に住む私が週に2、3回、食事を届けに行き、身のまわりの世話をしていました。

週に1度は私の家族と食事をともにして。夫は父の事務所に所属する俳優で父のお気に入り。2019年、里子として我が家に迎えた幼い息子とも、父はよく遊んでくれたものです。

1月17日金曜日、その日も私はいつものように、父のマンションに3日分くらいの食事を届けに行きました。その際は、とくに体調が悪そうな様子はなかった。

ただ、日曜日になって夫が、「先週食事をした際、ちょっと息が苦しそうだったよね?」と言うのが気になって。私は配膳に忙しく、父の変化には気づかなかったのですが。

そこで翌日、息子と父のところを訪ねたら、リビングにうつ伏せに倒れていたのです。その倒れ方が──息子がバーン、バーンと言いながらピストルを撃つマネをすると、「うぅっ」と言いながら、倒れ込んで死ぬ演技をする。その時とそっくりでした。

いつもはしばらく死んだふりをして、「ハハハ」と笑いながら起き上がるので、そのパターンだと思ったのでしょう。息子が駆け寄って「じぃじ」と声をかけましたが、起き上がりません。私は父に近づき、触った瞬間、わかりました。もう終わっているんだな、と。