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日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが展開していく中、江戸時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「吉原の闇」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

吉原の「闇」

ドラマでは30日にもわたって華やかな『俄』祭りが開催され、大いに盛り上がった吉原。

確かに吉原の世界には華やかな一面があります。

高級遊女のいる空間は、江戸の職人たちが作り出す精緻な工芸品で飾られ、旨い酒においしい料理が並ぶ。

そして三味線などの音曲が流れ、踊りがあり、江戸の町人たちが育くんだ「粋」とか「気っぷ」といった精神が横溢していた。

そこだけを見れば、たしかに吉原は「江戸の華」ということがいえるでしょう。

でもぼくが改めて言うまでもなく、吉原には「闇」の部分があるのも事実。今回はその「闇」について少し触れたいと思います。