人生相談での、ある公務員の告白
やはり面白いのは、ウソをつくことがやすやすとできる人のほうが恋愛強者である可能性が示唆されているというところではないだろうか。私たちは、言語というツールを手に入れたことによって、他の生物よりずっとたやすくウソをつくことができるようになった。そして、ウソをつくことによって、より次世代を残す可能性が高くなるのであれば、私たちの子孫たちはもっと高度にウソをつく能力を発達させていくということになるのではないだろうか。
ともあれ、現実の運用を考えたとき、ウソをついているのかどうか、完全に見抜くことは難しい(だからこそ私たちは証拠を必要とする)。側坐核が活発に活動しているかどうかも、実験室で計測するのでなければ他人から見てわかるものではない。また仮に活動が高かったとしても、必ずしもその人が百パーセントウソつきということにもならない。実際にウソつきの可能性が高い人に出会っても、その人がそのまま悪者ということにはならない、ということは明記しておく必要があるだろう。
ある雑誌の人生相談のコーナーで、自分は公務員の職にあるが、ウソをつくことがやめられない、他人をだまそうとか迷惑をかけようとかいう意図はないのだが、つい息をするようにウソをついてしまう、どうしたらいいのか、という相談を受けたことがある。
ウソを自然についてしまう自分を恥じているような文面だった。もし、そもそも脳の傾向としてこうした性質を持っていると自覚があるのなら、ウソをつくことが基本的には推奨されない職をなぜ、高い障壁を自らに課すようにして選んでしまったのだろう、と興味深く感じた。