ウソは必要不可欠
人間は、どんな人でも平均的に10分に3回はウソをつくという試算がある。
ウソは私たちにとって必要不可欠なものだ。美しい虚構を創造したり、優しいウソを使いこなして人々を癒したり、楽しませたりする仕事を、精力的に行う人もいる。それはひとつの才でもある。
人を貶めたり騙したりして搾取するために使うウソは恐ろしく、できるだけ回避したいものであるが、人の心を安んじ、喜ばせるためのウソであればよりよい運用がなされるように願いたいものである。
持てる能力を活用する方向に持っていくことが人間の美意識であり、知性というものではないだろうか。
※本稿は、『咒の脳科学』(講談社)の一部を再編集したものです。
咒の脳科学 (講談社+α新書)
なぜ、周りの言葉に苦しむのか?SNSにあふれる呪いの言葉、人を病気にもしてしまう暗示。イケニエを裁く快楽や罰を見たい本能や正義という快感。私たち人間の社会は咒(まじない)でできていると言って過言ではない。言葉には、意識的と無意識的とにかかわらず人間の行動パターンを大きく変えてしまう力があるからだ。今やSNSがひとりひとりを孤立させ、言葉はいっそう先鋭化している。正義や快楽に中毒する脳そのものが、そもそも人間社会を息苦しくする装置です。本書では、言葉に隠された力を脳科学で解き明かし、脳にかけられた咒がどのような現象を引き起こすのかを提示する。