(イメージ写真:stock.adobe.com)
インターネット上の誹謗中傷について、プラットフォーム事業者に迅速な対応を義務付ける「情報流通プラットフォーム対処法」が4月1日に施行されました。脳科学者の中野信子先生は言語とはその性質上、人間の行動パターンを大きく変えてしまうことがあることを指摘し、「人間の歴史はまじないの歴史」と語ります。「言葉の隠された力」を脳科学で解き明かします。そこで今回は、中野さんの著書『咒の脳科学』から、一部引用、再編集してお届けします。

標的にダメージを与えるという娯楽

誰かに殺意を抱いたことのない人は、実は少ないのではないかと思う。そうではなくても軽い気持ちで「死ねばいいのに」と口にしたり書いたりする人がいた痕跡をしばしば見かける。

また、標的にダメージを与える気満々で、攻撃心いっぱいの言葉がSNSに書き散らかされているのも、本当によく見る。明らかに的外れな非難であっても、悪意が表現されており、それが標的に届くのであればそれで大満足、といったていである。

自分がカジュアルに悪意を表明できる環境にいるということは、自分も標的になっていると考えたほうがより自然かつ安全でもあるはずだが、自分が標的になる可能性にはあまり思いが至らずにそうしてしまうというのもまた人間らしいことかもしれない。

残念ながら、自分の気に食わない誰かに呪詛のようにして言葉をぶつける行為というのは、現代でも大衆の娯楽として根強い人気を誇っている。