心のゆがんだ人

第2のタイプは、むしろ心のゆがんだ人だ。これらの人はすべての情報を信じるわけではない。自分に都合のよい情報だけを真実だと思い込む。

どんなに裏付けが脆弱でも気にしない。そして、一度信じると、どんなに裏付けのある反証を示しても受け付けなくなる。

あるお笑い芸人がかつての「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人の一人だという根拠のない噂がネット上で流れ、それを真に受けた人々が執拗に中傷を繰り返して逮捕された事件があった。一部の人間の愚かさ、浅ましさ、卑劣さを象徴する出来事といってよいだろう。

同じようなことがネット上で日々起こっていることだろう。誰かがおもしろ半分に書いたエピソードを、愚かな人々がまったく検証しないまま真実と信じてしまい、冷静な人がいくら反証しても耳を傾けなくなる。

実は私自身もネット上に事実に反する出来事を書かれ、それを真に受けた数人から何度か中傷を受けたことがある。

いわゆるヘイトスピーチも同じ類のタイプの人たちが流しているといえるだろう。事実の重要な部分を見ないで一部だけをゆがめて取り上げ、それを声高に喧伝し、それだけでなく、差別し他者を攻撃する。

もちろん、このタイプの人全員が、ここに示したような卑劣な人間だとは限らない。だが、情報を的確に判断できない点において知性を疑われるのだ。

 

※本稿は『頭のいい人が人前でやらないこと』(青春出版社)の一部を再編集したものです。


頭のいい人が人前でやらないこと』(著:樋口裕一/青春出版社)

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