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高齢化が進む日本では、介護人材が不足しています。2022年度の介護職員の数は215万人ですが、厚生労働省は2026年度には240万人の介護職員が必要だと推計しています。『メータ―検針員テゲテゲ日記』の著者、川島徹さんは検針員生活の後、10年間老人ホームで夜勤者として働きました。その経験から、「老人ホームは人生最後の物語の場」と語ります。そこで今回は、川島さんの著書『家族は知らない真夜中の老人ホーム』から、一部引用、再編集してお届けします。

「ご主人を殺したらしい」

一杯飲み屋の女将だった伊藤ミネさんが亡くなったあと、その部屋に新しい女性が入居した。伊藤さんが亡くなり1カ月も経たないときだった。

竹下ミヨ子さん、48歳。刑務所帰りだった。

「ほんとに刑務所入っていたの」

残業をしていたケアマネジャーの田中真奈美さんに尋ねると、

「ご主人を殺したらしいの、殺人よ。内緒ですよ」と教えてくれた。

「人殺し?」

「ご主人が悪いらしいの。D Vですよ」