突然天井を見あげて
長い刑務所暮らしのためか、竹下さんは体も心もぼろぼろになっていた。
前歯が2、3本抜けており、口の動きがだらしなかった。足腰が弱くなっており介助なしには立つことができなかった。車椅子のうえで上体や手がゆらゆらと揺れ、投げやりだった。
突然天井を見あげて笑うこともあった。
最初、イレズミ男の上村辰夫さんも、元社長の森山栄二さんも驚いていた。認知症の福田サヨさんは一緒になって笑っていた。
「おいおい、この女たちだいじょうぶかよ」と、森山栄二さんが言い、「気にしなくていいですよ」と、施設長の吉永清美さんが言うのだった。そして「みんなも一緒に笑おうか」と言うのだった。
「まだ若いんじゃないの。元はいい顔をしているのにね。もったいないね」と上村さんが言った。