販売員を見下して
婚約者の会社に回収に行った業者が、指輪を空港に持ち込んだところ、金(ゴールド)の入った商品は海外への持ち出しがしにくく、税関で引っかかってしまった、ということでした。実はこの指輪には金が含有されておらず、持ち出すことはできるはずなのですが、税関はその判定ができなかったようです。
この事実を知ったAさんのいらつきは頂点に達しました。私のいる「お客様相談室」にまで、直接、電話がかかってきました。
20歳代で若いのに、かなりきつい言葉で、命令調で話してきます。またAさんは、海外知識も豊富でした。
私はストーリーを全部聞いておりましたから、話は上手く合わせられました。
婚約者とは、離れていてなかなか会えない苛立ちが、言葉の端々に感じられます。
「もうすべてがめちゃくちゃよ。こんなことでうまく結婚できるかな、と思ってしまう」
こうなると、じっくり聞いてあげることが大事です。時間をかけてAさんの話を聞いてあげているうちに、その苛立ちはだいぶおさまってきました。
そこで、いったん電話を終えてから、改めて担当者から電話を入れさせました。どう対処したら税関を通過できるかを確認し、お電話で報告する、と担当者はAさんに伝えました。
その後、会社の物流網を使い、なんとかフランスの業者と連絡がとれ、無事に税関を通過するめどが立ったのです。
その間にも、Aさんからは、「これで彼とだめになったら、どうしてくれる」との苦情が売り場に入ってきたそうです。物言いはまた、強烈に販売員を見下したものです。
結局、また女性の係長は休日の夜9時に訪問しました。前回と同じように、Aさんは椅子を持ってきて座り、訪問者は玄関に立ったまま。こちらも慣れてきました。
係長は今後の対応を説明して、やっと承諾を得、いちおうはこれで解決しました。