再現実験で確認できなかった効果

(3) 笑うと前向きになる、は真偽不明

悲しい時はウソでも笑え」という巷でよくあるアドバイスにも、否定的な結果が出ています。

これは「表情フィードバック仮説」といわれ、「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」という理屈で、心理学の教科書には必ず登場する有名な説です。

仮説が提唱されてから100年以上、追試が行われてきましたが、いまだに真偽がハッキリしていません。

1988年のフリッツ・ストラックらの実験では、参加者にコメディ映画を見せ、口にペンをくわえてもらいます。

口をすぼめてくわえた時(口は「ウ」の形)と、ペンを歯でくわえた時(口は「イ」の形)で、映画の面白さを評価してもらったところ、イの表情を作った時の方が面白く感じる、という結果となり、論文は1000回以上引用されました。

その後、2016年に、17の独立した研究チームによって大規模な再現実験が行われ、9つの研究室では、少しだけ効果が確認され、残り8つの研究室では効果が確認できませんでした。