あさま山荘事件と『カップヌードル』
『カップヌードル』は不思議な運命もまとう。
発売翌年、昭和47年2月19日に勃発した、あさま山荘事件時に機動隊員に配布されたのだ。氷点下では弁当が凍ってしまう。とにかく極寒であり、大いに活躍した。日本中から注目を集めた現場の10日間にわたった中継に、湯気を立てながら啜る姿がブラウン管に映し出された。期せずしての大プロモーションだ。
左翼イデオロギーが、70年安保を経て、わずかずつ鎮静へと向かい始めたのも昭和後期元年である。その翌年に起こった、くすぶる過激派5人と国家の対立は、死者3名と重軽傷者27名を出す惨事となってしまった。
そもそもアメリカへの対応に端を発したイデオロギーで、その決起のひとつがあさま山荘の立て籠もりだ。ここを舞台にして、カップの麺をフォークで立って食べる、アメリカナイズされた新しい商品のプロモーションが同居した。なんとも皮肉な話ではないか。
他方結果として、イデオロギーの減衰に拍車をかける事件になった。