「ドリフターズの一員になる」という夢
幼少時にヒーローとして君臨したのは、正義の味方や梶原ワールドに代表される努力の男たちだった。だがやがて、成長に合わせて、ヒーロー観に変化が起こる。リアルを求め始めたのだ。
土曜の夜8時に、粉骨砕身する巨星を見つけた。ドリフターズだ。
仮面ライダーシリーズはV3まで付き合った。だが、昭和40年に生まれた男が小学3年生になった昭和49年のXは記憶にほぼない。小1の時に“帰ってきた”ウルトラマンも、同年スタートのレオの記憶はほとんどない。個人差は大きいと思われるが、偉大なるヒーローがドリフターズに取って代わった。
偶然にもこの年、ドリフターズに大変革が起こった。荒井注に代わり、志村けんが正式に加入した年なのだ。
幼稚なバカ者が人生で初めに描いた夢が、仮面ライダーになって正義に貢献することだった。次に小3にして描いた夢が「ドリフターズの一員になる」だった。志村けんの加入は、“あり得る”と信じさせる大変革だったのだ。
余談ながら、小5の時にはTBSのスタジオに『ぎんざNOW!』の、しろうとコメディアン道場のオーディションを受けに行っている。天才少年現ると騒然となる予定をしていたが、あっけなく散った。
この私事を持ち出して言いたいことは、昭和のブラウン管は少年に夢を見せ、尊い経験をさせた。それほどの存在だったのである。