映画『四十七人の刺客』では高倉健さん(手前)と共演した(写真提供:石倉さん)

「なんでこんないい役を?」

第3の転機はやはり朝ドラの『ひらり』で、俳優として全国的に名を馳せたこと?

――そうですね。相撲が大好きな娘の話で、親方夫婦が伊東四朗さんと池内淳子さん、島田正吾さんや僕の親父役が花沢徳衛さん、錚々たるメンバーでした。キャベツを1枚ずつ剥がして食べるのは、脚本の内館牧子さんの弟さんがそうやってたらしいですよ。

「変わってんねえ。それ俺がやるのか」「やってやって」って。視聴者からはキャベツばっかり送られてきて、もうすごかった。群馬だ茨城だ、って。近所中にあげて、いい顔できましたけどね(笑)。あれで役者としての自信がちょっと出てきたんですよ。

そしたら市川崑監督が僕を見初めてくれて、いい役をつけてくれた。それが『四十七人の刺客』って映画。最後の脱盟者ですよ、いい役でしたね。

「先生あの、なんで僕にこんないい役をくれたんですか?」「お前あれだよ、朝のドラマでキャベツ食ってたろ。あれおもろかったからな」って市川監督が。それで大石内蔵助役の健さんのところへも挨拶に行くわけですよ。楽屋にね。

扉をコンコンってしたら、お付きの人が「今着替え中です」「ダメですか?」「おー、サブちゃんか! 入れ!」ってなって、「いやぁ、潮が満ちて来たなぁ」「とんでもないですよぅ」「俺、この役は(小林)稔侍がやると思ってたんだよ。監督に訊いたら、朝のドラマでキャベツ食ってたやつだ、って。あ、サブちゃんか、って」。もう、嬉しかったですねぇ。