「所詮そんなもの」と受け入れてこられたのは
私たち姉妹が半孤児的状態で放置されていることをよく思わない大人たちが寄ってたかって母を責めている現場を見た時も、長期の留守中に預けられている家で、自分たちが迷惑がられているのがわかった時も、友達から「マリちゃんの家は親がいないから遊びに行くのを禁止されている」と告げられた時も、大きな落胆や悲しみはなく、そうした現実を「所詮そんなもの」と受け入れてこられたのは、世の中を綺麗に見せてくれる表現やエンタメと疎遠にしていたからだろう。
クラシック音楽業界で働く母から時々聞かされてきた、舞台裏の荒んだ事情も影響しているかもしれないが、人間という生物をそれほど高評価できぬまま成長したおかげで、ニュースで報道される出来事に気持ちをかき乱されたり、誰かと徒党を組んで正義や正当性を訴えたくなるようなこともない。