「自分の仕事を時給で計算したら……」
もちろん処遇は月額給与だけではなく、賞与も関係してきます。しかしほとんどの企業で、管理職の賞与は成果と強く紐付いています。管理職が成果を上げるためにより残業を増やせば、やはりタイパは悪くなります。また、会社全体の業績が反映される場合には、管理職個人がコントロールできる範囲を大きく超えていきます。
これらは簡易的なシミュレーションですが、こうした「タイパ逆転」現象は世間で多く起こり、管理職の魅力を減じています。「自分の仕事を時給で計算したら、とてもやってられないよ」という声は、多くの管理職から聞かれますし、もはや「タイパには目をつぶることにしている」という人も多く目にします。企業は、この「タイパ逆転」が自社でどのくらい起こっているのか、月額給与と残業時間のデータを使って一度計算してみることをおすすめします。意外なほど多くの従業員に起こっていることに気がつくはずです。
(※1)大井(2005)では、1979年から2004年までの管理職と一般職の相対賃金を調べ、 同様の結果を得ている。また、この論文では各種公式統計における「管理職」の範囲や定義についても詳細な議論が行われており、詳しく知りたい方は参照されたい。
大井方子“数字で見る管理職像の変化”日本労働研究雑誌 2005,545:4-17
※本稿は、『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(著:小林祐児/集英社インターナショナル)
高い自殺率、縮む給与差、育たぬ後任、辞めていく女性と若手──
日本の管理職の異常な「罰ゲーム化」をデータで示し、解決策を提案する。
「管理職の活性化」に悩む経営層にも、現場の管理職にも役立つ、知恵とヒントに溢れた1冊。