新・心とからだの養生学
イラスト:小林マキ

「最近よくむせる」「食べこぼしが増えた」「滑舌が悪いと指摘されて」……そんな自覚があれば、「オーラルフレイル」のサインかもしれません。これ以上悪化させないためのセルフケア方法を聞きました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

「オーラルフレイル」の原因に
「舌骨上筋」の衰えの影響

「オーラルフレイル」とは、噛む、飲み込む、話すといった口腔機能が加齢によって低下することを意味しています。

「口まわりの筋力低下やむし歯・歯周病による歯の減少、唾液の分泌量の減少などにより、口や舌をなめらかに動かす力や、食べ物を噛んで飲み込む『嚥下力』が衰えるのです」と説明するのは、オーラルフレイルの臨床研究をしている戸原玄先生です。

口まわりの筋肉の中でも、特にあごのすぐ下にある「舌骨上筋」の衰えの影響が大きいことが、戸原先生の研究で明らかになっています。

「舌骨上筋はあごとのど仏をつなぐ筋肉です。口を開けることに加え、ものを飲み込む際にのど仏を持ち上げて気管を閉じ、食道の入り口を開けて食べ物や飲み物を消化器官に送り込む働きもしています。舌骨上筋は加齢により筋繊維の数が減り、細くなることで衰えるのです」(戸原先生。以下同)