劇団「笑いの王国」結成の頃(59年)。左から芦屋小雁さん、崑さん、芦屋雁之助さん、花登筺さん(写真提供:こんプロダクション)

18代目(中村)勘三郎さんが勘九郎坊やだった頃、『頓馬天狗』の大ファンだったとか。

――そうですよ。なんせね、お父さんの17代目さんと僕は毎日放送でレギュラーの番組持ってたんですからね。現代劇で、17代目さんが探偵で、僕は書生で助手の役。

その時に、「うちの子供があんたの『頓馬天狗』が大好きでね、今日は一緒にうちへ来てくれない?」って言われて、麹町のお屋敷へ。そしたら頓馬天狗の白の衣裳や頭巾も大小用意してあって、勘九郎坊やもそれを着て二人でチャンバラごっこ。

勘三郎さんが喜んで何枚も写真撮って、ご飯になっても勘九郎坊やは衣裳をぬがずに刀持って僕に切りかかってくる。そのたびに「やられたぁ!」ってやんなくちゃならなくて、大変でしたよ。

ずっとのちに新橋演舞場で18代目勘三郎さんと『殿のちょんまげを切る女』で共演しました。藤山直美ちゃんも出ててね。僕は大工さんか何かの役で、偽の侍になる時は頓馬天狗に変装する。

その立廻りになると、毎日、勘三郎さんが舞台の袖から見てて、笑う声が聞こえるの。楽しかったですよ。それから何年もしないで、若いのに亡くなってしまって、元気でいてくれたらいい友達になったのに、と思ってね。

後編につづく

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