ローカル・ガストロノミー
実際、ここ数年で私がもっとも心惹かれているのも、地方にある店の「ローカル・ガストロノミー」です。これは「地産地消」からさらに一歩進み、その地域で生産された食材を使うだけでなく、その土地の風土や歴史や文化を料理として表現する試みのこと。
テロワールを売りにする場合、お客様に対する情報設計は、それほど大変ではありません。「この土地でつくられたものだけ」「うちの畑でつくったものだけ」とプレゼンすれば、それだけで一定の評価は得られるからです。ただし、料理の内容を伴わせ、人気店へと成長するには相応の努力と技術が必要であるのも事実でしょう。
全国からいい食材を取り寄せたほうが、いわゆる「美味しい料理」はつくりやすいに違いありません。それを「この土地だけ」「うちの畑だけ」とするのは、アピールポイントであると同時に制約でもあるわけです。
このハードルを乗り越え、制約から生まれる個性を価値につなげることができれば、テロワール、ローカル・ガストロノミーというストーリーを持って正真正銘の人気店になっていけるでしょう。
その文脈で紹介したいのが、「ペシコ(pesceco)」(フランス料理・長崎)、「ヴィラ・アイーダ(villa aida)」(イタリア料理・和歌山)です。