頻繁に会わなくてもつながる心地よさ

田村 私は、もともとべったり人とつきあうのは得意じゃないの。リスペクトしている方とのおつきあいほど、相手のペースを尊重して、あまりベタベタしないようにしています。

たとえば作家の萩原葉子さん。20歳近く上で、たまにしか会わなかったけれど、ある時期から、毎日夕方6時くらいに携帯に電話がかかってくるようになったんです。「もしもし、私。今どこ?」「今、電車の中です」なんて答えると、「わかった」とだけ答えて切る。それだけ。

柴田 生存確認みたいな感じですね。

田村 そうなの、そうなの。それがすっごく嬉しい。

柴田 人生経験を積んできたからこそ、お互いの心中を察することができる。頻繁に会わなくても、「つながっている」という感覚があると、心があったかくなりますよね。

田村 ほっこりする。歳を重ねると、そういうつながりは宝物ね。今はLINEとかメールで連絡をとり合う時代でしょう?

柴田 相手が今、どんな状態かわからないから、LINEは便利です。でも時々、声を聞きたくなります。

田村 やっぱり、声を聞くのはいいわよね。

柴田 安心するし、文字より心が動くような気がします。

田村 年齢とともに、おつきあいの仕方や相手も自然に変わってくるの。

柴田 はい。最近は高校時代の友人と頻繁に話すようになりました。それぞれ仕事を持ち、子育てもしてきたけれど、それも終わってリタイアした人が多くて、時間ができたんです。実家に帰った時に会ったり、東京に芝居を観にきてくれたり。

同業者とはまた違う感じで話ができるし。たとえば介護など人生のさまざまな局面で「私の時はこうだった」と、いろいろな経験を聞けて、いいなぁと思います。

後編につづく

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