大学病院では、血液検査、内視鏡、エコー、注射針でしこりから体液を採る検査をした。その体液の検査で、私の首のしこりは悪性のものであるらしい、と診断された。それは、まだ100パーセントの告知ではなかったけれども、ショックだった。その時は、同居中の彼氏に状況をあらためて説明した。

その後、生検のために、日帰りの手術を受けた。しこりのひとつを取り出して細胞レベルの検査をするためだ。彼氏にも立ち会ってもらい、血液内科という聞き慣れない科の医師から、その結果説明を聞くことになった。病名は悪性リンパ腫。血液の癌だ。正確には「がん」。癌と漢字で書くのは胃癌、肺癌、子宮癌などの固形癌で、白血病、悪性リンパ腫のような血液の癌は「がん」と平仮名で書くのが通例らしい。

それからすぐに治療が始まるわけではない。一口に悪性リンパ腫といっても数十種類あるらしく、どのタイプの悪性リンパ腫であるか、また病状がどの段階まで進んでいるかによって、治療が変わってくるのだ。ちなみに予後も違ってくる。CT検査、直接骨髄液を採る検査など、検査の日々が続く。

悪性リンパ腫という病名がわかっても、私にはネットでそれを調べる勇気が持てなかった。「生存率」といった項目をどうしても見てしまいそうで。そして、罹患した誰もが言うように、まず自分が「がん」になってしまったという事実を受け入れることができなかったからだ。その頃は知識がなかったので、これを受け入れることこそ、自分の「死」を受け入れること──単純にそう考えてしまったのだ。

いずれにしても検査の結果を待つ間は、これまでに味わったことのない、重苦しい日々だった。もっともしんどかったと言っていい。おそらく死刑宣告を待つ気持ちに近いだろう。しかも冤罪。自分は悪いことはしていないはずなのに。医師から聞いた内容から察するに、もしもがん細胞が骨髄にまで発見されたら、ステージⅣ。おそらく「死」は逃れられないだろうと察知した。そうとは限らないことは、後に知るのだが。