闘病ブログとの出合い

知人の中に同病の人はいなかった。当時、病院から得た情報だけでは、物足りないことばかりだった。たとえば私と同じ病気を患っている人が、今どんな治療をしているのか、どんな気持ちなのかを知りたかった。なんとか情報交換をする場はないだろうか。

闘病ブログを調べてみようと閃いた。でも、悪性リンパ腫で、まさに今治療中の人のブログは数えるほどしかなかった。途中でアップするのを止めてしまった人のブログもあった。まさか、病魔に負けて亡くなってしまったのでは。つらい内容のブログを読む勇気は、あの頃の私にはまったくなかった。なので、慎重に、最近の日付で記事をアップしている人のブログのみをチェックするようにした。

初めに出会ったのは、クミさんという方のブログ。私よりもずいぶん若い、30代前半の主婦だった。彼女の原発は肺。原発というのは、体のどの部分からこの病気が見つかったかという意味だ。クミさんの場合、骨髄まで転移したステージⅣ。まさに抗がん剤治療中で副作用がかなり激しく、特に吐き気がひどいため何も食べられない状態になるので、毎回の抗がん剤の点滴ごとに入院しているようだった。

クミさんは、健康診断で肺に不審な影が見つかった段階からブログを始めていた。過去のブログを見ると、絵文字とともに「カルテを見てしまった。“肺癌の疑い”って書いてあった。こわいよ~」とストレートに書いてある。詳しい検査で、肺癌ではなく悪性リンパ腫であることがわかり、「ラッキー!」とある。え? ラッキーなんだ。クミさんは、読者の私の期待に応えるかのように、毎日、刻々と変化していく状況やその時の気持ちを感じたままに書いて、私をのめり込ませた。

「肺癌の疑い」の項の記事では、アクセス数が3000を超えた日があり、「3000人もの人がこのブログを見てるの? みんな人の不幸に興味があるのかな」などと、素直すぎる感想も書かれていた。副作用である頭髪の脱毛具合なども写真入りで紹介している。ロングでお洒落にセットされたウィッグをつけて、むしろ楽しんでいる様子もあった。抗がん剤治療中は「ワッショイ、ワッショイ」というかけ声で自分を励ましているのが印象的だった。

私はクミさんの過去4ヵ月分のブログを一気に読んでしまった。読み終わった後には、これまで感じたことのない晴れ晴れとした充足感があることに気づいた。一方的ではあるが、クミさんはまさに私の同志であると感じて、うれしかった。そう、がんを告知されてからずっと感じていた孤独感が小さくなった気がしたのだ。

〈2につづく


会いたい。あの日の顔も知らない戦友たちに
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