「負担軽減は十分に可能だった」

元教授の妻は、常時介護が必要とされ、介護サービスの利用対象となる「要介護1」の認定を受けていた。訪問介護やデイサービスなどを受けられたが、いずれも利用していなかった。公判で検察官は「介護の負担軽減は十分に可能だった」と指摘した。相続などの準備も、退職後すぐに着手すればよかったと述べた。

<『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』より>

元教授は法廷でうなだれた。「妻がここにいて、ワイン1杯があれば楽しく過ごせていた。取り戻せないものを失った。ひとりよがりだった」

判決は懲役3年に執行猶予5年が付いた。孤立した介護に大きな精神的負担を感じていたことに加え、妻側の親族を含めて「できるだけ軽い処罰を」と望む声があったことが考慮された。

元教授は弁護士や社会福祉士などの支援を受けて財産処分を進めつつ、妻の位牌に手を合わせながら罪を償うと誓った。