愛にあふれた方

――今年1月に渡米して、モデルとなった桂子さんのもとを訪れたそうですね。桂子さんの印象は? 

本当にチャーミングで愛にあふれた方です。お会いしたとき、桂子さんは94歳でしたが、天真爛漫な少女のような純粋さがありました。ご家族にはもちろん、日本に対しても、20歳のときに海を渡ってたどり着いたアメリカという国に対しての愛もすごく大きい。人生を自分で選択してきたかっこよさと強さを感じました。

日常のなかの小さな幸せや感謝を常に感じていらっしゃいました。忙しいと忘れてしまうことや集団の中にいると見失ってしまうような大切なことをずっとすくい取って生きてきた方だろうと思いました。

桂子さんからはたくさんの印象的なお話を聞きました。その中でも、若いころの桂子さんがお花を植えていた時のエピソードに衝撃を受けました。ご年配の女性が桂子さんに、「なんで食べ物じゃないものを植えているの?」と聞かれたそうです。

些細なエピソードですが、なぜ桂子さんがその話を私にしてくださったのかを考えました。私は花が好きで、自分が好きな花を選んで家に買って帰ることができます。でも、桂子さんが生きていた当時は食べるのに精一杯で、食べ物以外のものに何か安らぎを求めることが厳しかったんだろうとその背景を想像しました。今の時代に生きているからこそいろいろな選択肢がある。その幸せを、私自身も改めて日常の中ですくい取れたらいいなと思いました。

フランクさんと桂子さんの長男のエリックさんはすでに亡くなっています。桂子さんと一緒にフランクさんとエリックさんのお墓参りに行きました。お供えするお花を桂子さんと2人で選んでいる時間は、私にとって輝かしい思い出深い時間です。