「バズる」と「信頼される」は全く別
― 社内の理解を得るのに苦労はありましたか?
村井:最初は「YouTubeなんでしょ?」と言われました。でも、紙の雑誌に入っていたような広告を動画で制作するのだと説明すると納得してもらえました。確かに初期費用はかかりますが、月に何本のタイアップ広告が入れば損益分岐点を超えるか、具体的な数字で説明すると、ビジネスとして立体的になってイメージしやすくなります。今では私の周りで、この収益モデルをイメージできていない人はほとんどいません。
―「バズる」と「信頼される」のバランスはどう考えていますか?
村井:バズることと信頼されることは全く別です。その背景には、YouTube上で数字を取っている人の中には、企業が広告を出すのに眉をひそめがちな人もいるというのもあります。私たちは、文藝春秋だから広告を出してもいいと思われるような人選とコンテンツを作っています。100年以上続く文藝春秋がやる以上は、信頼側に軸足を置きたいと考えています。バズりながら信頼を得ることは、バランスするのも難しいし、継続するのは一層難しいです。その両面を理解した上で、バランスを考えながら進めています。
―個人でSNSをやっていることは役立っていますか?
村井:はい。個人でXなどのSNSをやってきて、数字を追い求めて無茶なことをすると良くないということが分かりました。特に広告ビジネスを考えた時、行き過ぎると「文藝春秋にこんなやつがいるのか」と眉をひそめられてしまう。やはり看板を背負ってやっているので、そのバランス感覚は、自らSNS情報発信をやってきたから分かったのだと思います。