イラスト:遠藤舞
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「良質な睡眠って」。学生の頃から夜中に目を覚ます癖があったというスーさん。質の悪い睡眠を体力でリカバーできる年ではなくなり、なんとか睡眠改善に取り組んでみましたが――。

良質な睡眠って

見て見ぬふりで放置している問題が、私の人生には山ほどある。そのひとつが睡眠の改善だ。みなさん、毎晩よく眠れていますか。私はそうでもありません。

あれは高校生の頃だったか、夜遅くに帰ってきた父がこう言った。「昨日の夜中、トイレに行こうと目を覚ましたら、おまえベッドの上で正座したまま眠ってた。大丈夫か?」。なにそれ。当然ながら、私には記憶がない。無自覚に不可解な行動をしている自分が少し怖くなった。そのあと、もっと怖くなった。数日後、夜中にベッドの上で正座をしている自分に気がついたのである。なにこれ。

思えば、あれが中途覚醒の始まりだった。いまではいつかの父親と同様、尿意で目が覚める夜ばかりだ。中年ならそういうもの。しかし、尿意を感じるずっと前から、私には夜中に目を覚ます癖があったのだ。中途覚醒のプロフェッショナルと言える。

私の中途覚醒は非常に正確で、一晩のうちに寝たり起きたりを繰り返す。3時間以上続けて寝られた夜は、この10年で片手に余るほど。社会人になってからの睡眠はこうだ。就寝時間は午前1時か2時過ぎ。ギリギリまでスマホを見ていようが、ゆっくりお風呂に浸かろうが、寝入りはたいていスムーズ。しかし、1時間半後に目が覚める。トイレに行く。水も飲む。そのあとは難なく再び眠れる。そしてまた、1時間半後に目が覚める。