「俺が一番だ」と演技

江戸時代の人たちの藩に対する感覚は今の自治体とは全く違うと思っています。藩の上に大きなものとして幕府があるけれど、当主である道廣は「俺が一番だ」と思っていた。官位も渡辺謙さん演じる田沼の方が上ですけれど、官位は関係なく俺が上だっていう気持ちです。生田斗真さん演じる、御三卿の一橋治済様に対しても、自分が利用するぞという立場でした。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

渡辺謙さんの目線をリアルにいただくとゾクッとしますけれど、それをゾクッとせず、ニコニコして見てなきゃいけない。気おくれしちゃいそうなところをぐっと押さえて演じるのは大変でした。

謙さんの作る空気感は勉強になりました。生田さんは、撮影に入る前から一橋様の雰囲気になっていくんです。みなさん、声がかけにくくなる空気感をふっと作る瞬間があって、面白かったですね。

謙さんからは、最初の収録の時に「ナイスキャスティング」と言っていただいてうれしかったです。その後も、謙さんが、田沼の側近である三浦役の原田泰造さんに「えなりの殿様、怖えぞ」って言っていたそうなんです。この話をくりぃむしちゅーの上田晋也さんから聞いたときは、ありがたく思いました。直接いただく褒め言葉もうれしいですが、間接的な褒め言葉って3倍ぐらいうれしい。