夫に「俳優ってすごい!」と話すと意外な反応が…
朗読会でもお客様の前でしゃべらせていただきますが、私は全然緊張しないタイプなので、むしろ人がいた方がいい感じになる(笑)。だから、人前で何かをやることについては、まったく心配していません。それよりも今は、「お芝居はこういう風に作られていたんだ」「手の動きや角度、お客様にどう見えるかを、いろいろ計算して演技してるんだ」と新しい発見が続々。
私の夫はドラマ制作に携わっていたので、家に帰って「俳優さんってすごい!」と力説したんです。すると、「今頃気づいたの?(笑)」と言われました。今ではテレビドラマを観ていても、全ての役者さんに感心してしまいます。
演出家の仕事にも驚きます。大人数でお芝居をする場面など、終わった瞬間、深作さんはそれぞれに細かい指摘を出していきます。その洞察力に「この人は目が何個ついてるの!?」と不思議でなりません。深作さんのアドバイスはどれもストックしておきたい宝の言葉ばかりで、全部理解してから稽古したい。だから取りこぼさないように台本に、全部書き込んでいくんです。(と台本を見せてくださる)。
共演者のみなさんは、舞台経験の長い方も多く、全体を俯瞰で見る力が培われている。私のオロオロさ加減が目立たないように、みなさんが器用にご対応くださっていますね。
あと、まだ全然掴めていないのが“愛”についてです。フェードラがペルセアに対して抱く思いは、夫への愛とも息子たちへの愛とも違う。深作さんからエーリッヒ・フロムの著書『愛するということ』をお勧めされたので、今になって読んでいます。
ペルセアを演じるのは、今年22歳になった佐竹桃華さんで、才能があって向上心があるすごくいい子。2人で話し合いながら“愛”を探しています。でも、お互いに恋愛体質とはほど遠く、“儚さ”とか“守られる”ことから既に脱皮しているんです。私もかつては、好きだと思ったら特に悩みもせず、迷わず獲りにいくタイプだったので「私たち基本強いから、どうしよう(笑)」って、2週間くらいずっと悩んでいます。フェードラにとって、ペルセアはまるで自分を見ているようで、ペルセアに希望や未来を見出している。これは、私が後輩をみているときの気持ちにも似ていますね。