久米宏さんやジェーン・スーさんとの出会い

――堀井さんは大学卒業後、超難関のTBSアナウンサー試験に合格し、1995年に30期生として入社しました。2年目の24歳で同期入社の夫と結婚、25歳のときに長女を出産。その3年後に息子を出産し、育児と仕事に追われる日々を過ごします。

最初に、物事を直感で決めるタイプだとお話ししましたが、それは20代の頃から変わっていません。振り返ると、会社員時代は全然ものを知らなかった。出身地の秋田県では、友達は高校を卒業したら結婚していましたし、私が大学生の頃に実家に帰ると、子どもがいる同級生も多かった。

一方、当時東京でキャリアを積む場合は、30歳ぐらいまで勤めてから、やっと私生活での充実について目を向けるのがスタンダードでした。でも私は、母の言葉もあり、就職したらすぐ結婚しようと思っていました。それがおかしいとは思っていなかったんです。

TBSに入社してから、偶然、今の夫という素敵な人が見つかって。付き合って1年で結婚して、翌年に長女を、その3年後に息子を出産しました。しかし、入社2年目で結婚と出産、その後も母親として仕事を続けてまた出産することは、当時あまり歓迎されることではありませんでした。いろいろと打ちのめされることもあった暗黒の時代。週刊誌にも書かれたりしてすごく泣いたし、日記を見ると、よく生きてきたなというぐらい。でも、子どもが生まれたら世間の声なんてどうでもよくなるんですよね。何を言われていようが、とりあえず目の前にいる赤ちゃんのために搾乳する、みたいな。そこで強くなりましたね。

やがて久米宏さんやジェーン・スーさんといったいろいろな人たちと出会うことによって、いわゆる「女だから」「女なのに」という考えもだんだん変わっていきました。周りの人々が勝手に当たり前にしていることに縛られることはないし、いろいろな生き方があっていい。入社2年目で育休を取った自分を責める必要もないんだと。でも私の母のように「女は一歩下がって」が当たり前の世界で生きてきた人たちもいる。80年、90年と一生懸命守ってきた価値観、その年代の人たちの常識を変えてと言っても難しい。ただ足かせになるものは次の世代に下ろしていってはいけないなと思っています。同年代で話していても、「絶対ここで止めようぜ」とよく話をしています。