なぜマウントを取らずにはいられないのか

まず何よりも、自分が相手に対して優位な立場に立っていると実感し、それを相手にも思い知らせることは、強い快感をもたらす。

マウントを取ると気持ちがいいからこそ、繰り返すわけで、この傾向は強い自己愛の持ち主ほど顕著に認められる。

また、相手より優位に立てば、職場でも家庭でも何かと都合がいい。自分のほうが「上」と示すことによって、嫌な仕事を押しつけたり、少々無理筋の要求でも通したり、こちらには落ち度がないかのように装ったりできるだろう。

こういうことは、自分がそれをやった側であれ、やられた側であれ、誰にでも経験があるはずだ。だから、マウントを取れば何かしら得することがあると思い込んでいる人は少なからず存在する。

もっとも、快感や利得といったポジティブな理由だけでマウントを取るわけではない。

なかには、承認欲求が満たされず、「自分は本来ならもっと認められてしかるべきなのに、誰も認めてくれない」と不満と怒りを募らせているがゆえにマウントを取る人もいる。

たとえば、自分は仕事ができる有能な人間だと思い込んでいるのは本人だけで、職場では誰も認めてくれず、あまり出世していないような場合である。

たとえ本人が自身を過大評価しているにすぎなくても、「本来なら自分はもっと高く評価され、昇進できる はずだった」という思い込みが強いと、自分がどれだけすごいかを認めてほしい一心で、自身の能力や成果、ときには知り合いや過去の栄光などを自慢し、マウントを取る。