「自己愛過剰社会」

現在の日本社会には、マウントに拍車をかける社会的要因がいくつもある。

まず指摘しておきたいのは、アメリカを見習うあまり、自分を好きになって自尊心を持つことを推奨し、自己表現や自己主張ができる人間を育てようとしたせいで、多くのナルシシストを生み出し、「自己愛過剰社会」になってしまったのではないかということだ。

一般に、自尊心を持つのはよいことと思われている。だから、戦後の日本ではほめて育てる教育によって自尊心を高めようとしてきたのだが、それには副作用が伴う。

最も重大な副作用が「自己愛過剰社会」なのだ。

この言葉は元々アメリカで使われるようになった。『自己愛過剰社会』という本まで出版されているほどだ。

同書は「現在、アメリカではナルシシズムが流行病(エピデミック)にまでなっている」と指摘し、その典型としてドナルド・トランプを挙げている。

「自分の所有する建物に自分の名を冠し、自分のテレビ番組をもち、大学にも自分の名前をつけ (そう、トランプ大学というのがあるのだ)、トーク番組の司会者にけんかを売るドナルド・トランプは、ナルシシストの成功者の好例である」というわけである。

「成功者」と呼ばれるにふさわしく、トランプは2024年にアメリカ大統領に再選された。

 

嫉妬や妬み(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)