両親の愛情を奪われるのでは?という喪失不安

同時に、姉は嫉妬にもさいなまれているのではないか。子どもの頃から優秀だった姉は両親にとって自慢の娘であり、それほど勉強ができなかった妹は両親の扱いに姉妹格差を感じてきたという。

ところが、妹が男の子を産んで実家の近くで暮らすようになると、両親は「跡継ぎができた」と喜び、溺愛するようになった。

それを近くで見ていて、姉は両親の愛情を甥に奪われるのではないかという喪失不安、つまり嫉妬を抱くようになったと考えられる。

それほど両親が孫を溺愛するのなら、姉も子どもを産めばよさそうなものだが、その前段階となる結婚で姉は頓挫している。

非嫡出子の割合が欧米と比べて低いわが国では、一般に出産は結婚とセットで考えられており、未婚の姉が出産することは望み薄だ。

姉としても、40歳までに出産したいという願望が強かったので、両親の勧めに素直に従って結婚相談所に入会したようだが、「自分より学歴が低い男性は尊敬できない」と口癖のように言っているようでは、なかなか難しいだろう。

担当者がやんわりと注意しても、姉は聞く耳を持たなかったようだから、ほぼ匙を投げたのではないだろうか。

姉は八方塞がりのように私の目には映るのだが、それを決して認めようとしない。だから、羨望の対象である妹と夫の価値を否定しようとする。

他人の価値を否定したからといって、自分の価値が上昇するわけでも幸せになれるわけでもない。

だが、他人の価値を否定すれば、自分の価値を相対的に高められると思い込んでいるのかもしれない。