父親に学歴マウントを取る息子
地方の中小企業に勤務する60代の男性会社員は、定年後に再雇用で働くようになってから年収が大幅に低下した。
そのうえ、東京から20代の一人息子が舞い戻ってきて一緒に生活するようになり、その息子から吐かれた言葉に唖然として、「これからの生 活は一体どうなるのか」と不安でたまらなくなったと訴えて私の外来を受診した。
この息子は小学生の頃から勉強ができて、中高一貫の私立の進学校に入学したのだが、同校は地域でトップの学校だった。当然、自慢の息子だったわけで、高校卒業後は偏差値が高いことで有名な東京の名門私立大学に進学した。
男性は、できる限り息子に仕送りをしたが、家賃の高い東京で暮らすには、それだけでは不十分だったので、貸与型の奨学金も借りて何とか乗り切った。
大学卒業後、息子は大学院の修士課程に進んだ。名門大学だけあって大学院まで進む学生は多いらしく、大学院を修了したほうが就職に有利とも息子は男性に話した。
男性は妻と協力しながら家計をやりくりし、息子のためにさらに2年間仕送りを続けた。
ところが、息子は修士課程の2年時に就職活動をしたものの、一つも内定をもらえなかった。
自分が大学院で取り組んだ研究や学んだ専門知識を活かすことにこだわり、職種を絞りすぎた息子は、募集人員が少ない研究機関や会社の研究所ばかり受けた。当然、狭き門となる。
しかも、息子は幼い頃から人前で話をするのが苦手であり、そのせいで面接での評価もかんばしくなかったのか、どこからも採用をもらえないまま卒業を迎えてしまったのだ。